親密さ
私が人生ベスト級に好きな本が、小山田咲子さんという方の書いた
「えいや!と飛び出すあの一瞬を愛してる」というでして、
この日記もその本に感化されて書いているといっても差し支えない。
日々の雑感が、指の隙間から流れて行ってしまうことがわたしはいちばん恐ろしい。
感情を文字にして(あるいは音楽、映像にして)残しておきたいというのは
臆病な印なのかもしれないと思う。
小山田咲子さんが亡くなったのと同じ、23歳をいま生きている。
ペットの亀と暮らしている。
友達は、多くはないけれど、近くにも、遠いところにもいる。
恋人はいない。数日前に別れた。
音楽や映画といった芸術は、自分がそのとき必要としている啓示を与えてくれることがあって、
それは奇跡のような偶然であるとも思う。
その一つが一昨日鑑賞した、濱口竜介監督の「親密さ」であった。
ずっと観たい作品であったし、映画館で上映される貴重な機会であったから、
迷わず足を運んで、4時間15分、スクリーンの前でただ座り、
そこで確かに起きていたことを眺めてた。
第二部で、一人の女性が恋人と別れるシーンがあるのだけど、
大げさだけれど世界観が違う人、とあってとても納得してしまった。
そして世界観が違うからこそ、言葉で通じ合うのではなく、
触れることが好きだった、と。
あんな人と付き合ってて軽蔑した?なんて、
言いたくなるような人と付き合ってたことわたしにもあるな。
けどその気持ちも肯定して良いのだと気づいて心が軽くなった。
誰かを好きという気持ちは共通認識のようで全く違って、
だからこそ取返しのつかないような勘違いが生まれたり、
不意に傷つくことがあるのだと思う。
それでもわたしは好きを言語化して紐解くことに興味がある。
好きという気持ちをどう捉えているのかはその人の人生ですらあると思う。